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新型コロナウィルスと血中酸素飽和度(SpO2)
血中酸素飽和度(SpO2)という言葉を、新型コロナウィルスをきっかけに知ったという方も多いのではないだろうか。筆者は学生時代にスポーツをやる中で出会ったが、日常生活ではこれまで聞いたことがなかった。
新型コロナウィルスは当初「新型肺炎」とも呼ばれていた通り、肺炎を併発しやすい。その際、重症化の度合いにSpO2が用いられるため、注目されているようだ。
また、最近ではパルスオキシメーターなどの専用機器を使わずとも、スマートウォッチなどでSpO2の測定が可能になった。

腕時計で血中酸素が測れるって、冷静に考えると凄いです…
スマートウォッチで SpO2 を測定する仕組み
血液の色と血中酸素飽和度
大前提として血液は赤い。これは赤血球に含まれるヘモグロビンの色である。ヘモグロビンは鉄を含むが、この鉄が酸素と結合すると赤くなるため、血は赤い。ちょうど、鉄がサビる(酸化)すると赤っぽくなるのと同じだ。
従って、血液が多く酸素を運んでいるほど、血は鮮やかな赤に近く、逆に血液が酸素を運んでいない場合は黒に近づいていく。動脈血は赤く、静脈血は黒い、というのはこれが原因だ。
SpO2 を測定するには動脈血の色がわかればよいため、動脈に光を当て、その光を解析するのが一般的な手法のようだ。
スマートウォッチはどうやって測定している?
スマートウォッチは言ってしまえば、「一枚の板が手首についているだけ」だ。それでどうやって血液の色まで認識できるのかは簡単には想像できない。
今回「 Apple Watch Series 6」を例に、SpO2の測定法について触れよう(参考ページ[1])。

「Apple Watch Series 6」では、裏面のクリスタルから2種のLEDを照射し、その反射光を受け取ることで動脈の色を判断する。
ここにはかなり高度なアルゴリズムが使われているはずだ。
- どこが動脈なのか?
- 反射光からどうやって血液の色を認識するか?
- 各人の腕の特性(毛や脂肪の厚さ)については?
等を考慮にいれなければならないからだ。
その精度は?
「Apple Watch Series 6」「Fitbit Sense」にはSpO2センサが搭載されているほか、Fossilの次期スマートウォッチにもSpO2センサが搭載されると噂されている(WinFutureより)。有名メーカーだけでなく、多くのスマートウォッチにSpO2センサが搭載されている。
しかし、各社に共通しているのは「日々の健康管理やフィットネス」向けという点だ。決して医療用ではない。パルスオキシメーターとは根本的に違う。
なぜパルスオキシメーターとは違うのかというと、例えば以下のような点があげられる。
パルスオキシメーター | スマートウォッチ |
---|---|
周囲の光を遮断して測定 | 周囲の光は遮断していない |
脂肪の薄い指先 | 人によって形状の違う手首 |
透過光で測定 | 反射光で測定 |
動脈の色を測定するにはパルスオキシメーターの方が正確になるのは明らかだろう。したがって、スマートウォッチの数値はあくまでも「健康管理やフィットネスのための参考値」といえる。
とはいえ、冒頭にも述べたように筆者はスポーツを通じてSpO2を知った。当時はパフォーマンス向上のために机上で学んでいたことだが、それが気軽に測定できるようになったのは素晴らしい進展であろう。
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