M1チップの仕様が明らかに?着実に進むリバースエンジニアリング

 M1チップ搭載Macは昨年登場し、その性能・省電力性が大きな話題を呼んだ。今年はその二代目となるM1Xチップが搭載されたMacが発売されると言われている。

M1チップは完全に内製で作っていることもあり、その恩恵を受けることができるのは現時点でMacのみ

 もちろん、Appleが他社にチップを提供する予定も今のところない。M1チップについては、自社の競争力として抱える戦略だろう。

 そんな中、M1チップのリバースエンジニアリングが進んでいる、という驚くべき記事を見かけた。内部挙動についてが記された、実に350ページものドキュメントが公開されたという内容だ。

 もちろんこれは完璧な仕様というわけでもなく、リバースエンジニアリングの結果として完成されているわけでもないが、今回はそれについて取り上げる。

引用:TomsHardware

リバースエンジニアリングとは?

 まず、リバースエンジニアリングとは、ハードウェアやソフトウェアに対して検証を行っていくことで、明らかにされていない仕様を解き明かしていくという試みだ。

 雑に例えるならば、完成されている製品をバラしていくことでその設計図を作成するようなものだと思えばよいだろう。

 これは大抵、高いレベルの技術者がとてつもない時間や労力をかけて行うものだが、昔からよくある話でもある。例えば、IntelのCPUに対してリバースエンジニアリングを行って、公式にドキュメント化されていない仕様を明らかにするような例は多い。

筆者メモ

リバースエンジニアリング、論文なんかで見かけると「力入ってるなあ」という印象を受けますね

 リバースエンジニアリングによってハードウェア仕様を明らかにすることで、OSレベルのソフトウェアを最適化できる、といった利点がある。

 M1チップの命令セットはARMであり、既にMacOSだけでなくLinuxもM1チップ上でネイティブに挙動するが、MacOS以外がM1チップを活かしきるにはやはり仕様が明らかになっていなくてはならない。

 M1チップはその極めて高い性能と省電力性から、こうした需要が高かったのか、わずか1年にして今回こうしたドキュメントが出てきた、というわけだ。

 このドキュメントの制作には、LinuxがM1チップを利用できるように貢献した人も関わっているようで、ドキュメントによって様々な低レイヤソフトウェアが恩恵を受けることも考えられそうだ。

Apple側の対応は?

 当然だが、リバースエンジニアリングを企業が公認することはありえない。「良くても黙認」というレベル感だ。ドキュメント化していない時点でそこには何らかの戦略や意図があるのであって、それが解き明かされ、公開されることを良しとするはずもない。

 百歩譲って、IntelのようなCPUを単体で販売している企業の製品を、他社が活かすためにリバースエンジニアリングするのであれば仕方がないともいえる。

 しかし、AppleはM1・Mac・MacOSという完全にパッケージ的な売り方をしているのだから、そもそもリバースエンジニアリングされる筋合いもないのだ。

筆者メモ

「そんなことするならMac使ってよ」で終了ですからね…

 従って、リバースエンジニアリングの結果が公開されることに関してAppleが黙認するかは、かなり怪しいだろう。そもそも法律的にもきわどい。「商用利用されなければOK、されればアウト」と言えば単純だが、技術や知識というのはその判断が難しいからだ。

 今回のドキュメントのような試みが広がっていけば、Appleが何らかの対応をしてくることや、声明を上げてくる可能性は十分にある。

M1チップが「オープンソース化」する?

 こうしたリバースエンジニアリングが進んでいくと、M1チップのような優れたアーキテクチャが丸裸になり、「オープンソース化」することも考えられる。

 徐々に詳細なアーキテクチャが明らかになっていき、そこから更に一歩進んでハードウェアバグがあればそこに修正が加わったり、といった具合だ。M1チップベースに始まったが、それを超えるようなものができていくような営みが想像できる。

 そして例えば半導体ベンチャー企業がそのソースを元にM1ライクなARMアーキテクチャチップを作成して競争が促進され…といったようなストーリーも考えられるのだ。

 ソフトウェアの最適化のためのリバースエンジニアリングどうこう、ではなく、よりストレートにチップの設計図自体が役に立っていく物語である。

 いずれにせよ、法律的に怪しいというか黒な部分もたぶんにあるため、Appleがこうした営みをどう捉えるかにも注目が集まるだろう。

 しかし、技術的な部分だけ抽出すればとても面白い営みであるのは間違いない。

筆者メモ

技術に関しては「パクリ」とか関係なく、近いものが出てきてしまうものです。(だから企業はライセンスに対して過敏になるわけですが…)

とはいえ、はっきりドキュメントとして出てくるのは面白いですね