Contents
Intel が新GPUブランドを発表
Intelが8/16、新GPUブランド “Intel Arc” を発表した。特定のGPU名や製品名を示すものではなく、グラフィックスに関するハードウェア、ソフトウェア、サービスに冠するブランドのようだ。
第一弾の製品はdGPUである「Alchemist」で、2022年の1Q(1-3月)に発売される見込みだ。この旧称である「DG2」は以前から2022年初頭に発売とされていた。
これの発売に合わせて、新GPUブランドを打ち立てたと捉えることができるだろう。

これを機に少し、IntelのGPUに対する取り組みやGPU市場全体についておさらいしようと思う。せっかく書くので「これを見ればGPU市場の概要がわかる」という内容にしたい。
iGPU と dGPU について
まずは基礎知識として、iGPU(integrated GPU)とdGPU(discrete GPU)についてを振り返る。
GPUはグラフィックス処理に特化したプロセッサであり、本来はグラフィック限定の処理を行なってきたものだ。しかし、その並列計算能力の高さから、GPUは昨今、グラフィックス以外の処理にも多く利用されている。並列計算を多く含むAI関係の演算はその代表例だ。
GPUには iGPUとdGPUというモデルがある。
・ iGPU:CPUと同一のチップセットにGPUが内蔵され、共通のメモリを利用する。
・ dGPU:CPUとは完全に独立してGPUが存在し、利用するメモリも離散されている。

iGPUは、CPUベンダであるIntelも開発を行なっている。一方で、dGPUはグラフィックボード(いわゆる、グラボ)を開発しているベンダが開発を行なっている。NVIDIAが代表例であり、AMDと続く。
GPU のシェアについて
まず、2019年4Q(10月-12月) から 2020年4QのGPUのシェアは以下の通りだ。

Intelのシェアが圧倒的に見えるが、これはiGPUも含んだ数値だ。CPUの市場を支配しているIntelが高い数値であるのは当然といえる。IntelがGPUで勝っている、とは言えない。
実際に同期間のdGPUの市場は以下の通りとなっている。

dGPUのシェアはNVIDIAが圧倒的であり、次点でAMDが並んでいる。PCゲーマーやクリエイターであれば、それぞれ「GeForce」シリーズや「Radeon」シリーズといったブランド名には聞き覚えがあるのではないだろうか?
一方で、Intelは0%となっている。それもそのはず、IntelはdGPU市場への参入をそもそも行っていなかったのである。
一般的なコンシューマーがGPUを手に入れるには、NVIDIAかAMDのどちらかのグラボを買うことになっているという状況だったわけだ。
Intel の dGPU への参入
こうした状況の中で、近年IntelはdGPUの開発を始めていた。「Intel Xe」シリーズの製品がそれだ。
2020年1月には開発者向けだが、「Intel Xe DG1」を発表し、2020年夏には「Intel Xe DG2」のリリースが予定されていると発表された。2020年1月から現在2021年夏まで、「Intel Xe」の製品名でdGPUの開発や販売に向けた諸々の努力を繰り返してきたのである。
そして、そんな中で打ち出されたのが今回の「Intel Arc」で、その第一弾の製品が「Intel Xe DG2」の名を改めた「Alchemist」である。

初めてのコンシューマー向けのdGPUである「Alchemist」のリリースをきっかけとした、「グラフィックス市場への参入」を一挙に狙っているといえる。
つまり、先のセクションにあげた「dGPU Market Share」でも高い割合をとっていこう、という試みである。自社が開発しているCPUに内蔵されたiGPUだけでなく、dGPUベンダとしてもシェアを得ていこう、という狙いだといえる。
今後のGPUベンダの動向は?
Intel
Intelは上記にまとめた通り、GPU市場に本格参入を試みている。しかし、現時点で明らかにシェアが取れそうという情報はない。「Alchemist」の旧称である「Intel Xe DG2」も圧倒的な性能を誇っているわけではないため、即座に支配的なシェア獲得とはいかないだろう。
また、余談だがIntelはCPUシェアをここ数年少しずつAMDに奪われている。
NVIDIA
NVIDIAはGPUのシェアを既に支配しているが、更に成長を続けている。
また、NVIDIAはCPU開発に取り組むと発表している。
これは従来のx86アーキテクチャではなく、AppleのM1チップと同様にArmアーキテクチャを採用したCPUだという。デファクトと異なるアーキテクチャではあるが、これは圧倒的な性能を誇ると見られている。こちらは2023年初頭にリリースだが、動向がかなり楽しみである。
大胆にいえば、5年後には高性能サーバではCPUもGPUも当然NVIDIA製という状況になっている可能性もある。
AMD
AMDはここ数年で、CPUのシェアを明らかに拡大している。CPUのシェアはIntelとAMDが占めているが、徐々にAMDの割合が増えていっている。コンシューマー向けのゲーミングPCでも、AMD製CPU搭載のものが増えていっている。

一方で、GPUのシェアではNVIDIAに敗北している。
現状では大きな動きを見せる様子はないが、今後もCPU、GPUの両市場にある程度の位置は保ち続けるだろう。
まとめ
今回は Intel のグラフィックスブランド「Intel Arc」の発表を機に、GPUベンダと市場についてまとめた。
GPUはゲーム・クリエイタ・AIといった分野が拡大し続ける限り、更に伸びていく市場である。この流れの中で、実質一強になりそうだったNVIDIAにIntelが待ったをかけることになるか、今後に期待がかかるといったところだろうか。