「味の素」の技術は半導体(CPU)にどう使われている?

結論からいうと…
  • 半導体回路は何層にも積み重なっている
  • その層の積み上げに絶縁体が必要
  • その絶縁体をフィルム化して商品にしたのが味の素
  • パソコンにおけるシェアは世界でほぼ100%

正直言って知らなかった!

 昨今、半導体不足が世界中で問題となっている。ここには生産側の経済、新型コロナウィルス、需要増大等の事情が絡んでいるのだが、ここでは触れないことにする。

 そんな中で「味の素の半導体事業が伸びている」といった話が巷で出てきていて、筆者は驚いた。筆者はコンピューターサイエンスには若干の背景知識があるが、まさか味の素の製品がCPUに使われているとは全く知らなかったからだ。

 そこで今回は味の素の技術がCPUにどう使われているか、ちょっと細かく書いてみようと思う。

筆者メモ

味の素って食品だけだと思ってました…

どういう技術なのか

多層の電子回路と原始的な構築方法

 まず、CPUは1980年代から2010年前後まで、凄まじい速度で演算能力を向上させてきた。これは一重に、半導体回路の高集積化のおかげだ。電子回路や部品を小さくすればするほど、その処理速度は上がっていくと考えて間違いない。

 高集積化の中で「電子回路の多層化」は当然のものとなっていた。単に電子回路を積み重ねるのではなく、層間での接続も可能にした電子回路だ。(平屋よりもマンションの方が効率が良いが、単に上に重ねるだけでなく当然エレベーターや階段も必要、みたいな話)

 この多層の電子回路を構築する方法はいくつかある。原始的なものは、基板を重ねてそれを全て貫く穴をあける。そこから各回路に配線していく手法だ。正にエレベーターのイメージである。

 とはいえ、このやり方は無駄が多い。そもそも全ての層を貫く穴が大きいことや、それ以外の技術的な問題にもつながっていた。

ビルドアップ基板

 そこで考え出されたのが、一層ごとに穴をあけ、配線を形成して積み重ねていくやり方だった。これをビルドアップ工法という。これによって全てを貫く穴を開ける必要はなくなり、各層に小さな穴を開ける無駄のないやり方となった。

 この手法で必要なのが、レーザーによる微細な穴・銅のめっき加工が可能な絶縁体層である。

[1]より引用

ABF(Ajinomoto Build-up Film)

 もうおわかりかもしれないが、絶縁体層に使われているのが味の素が開発した絶縁体フィルム のABFだ。

 ここには当時インク形式でふきつけていた絶縁体をフィルム化したという大変な企業努力や功績がある。これの基礎となっているのが、まさに食品に使用されるアミノ酸の技術で、それを応用した絶縁性樹脂だというのが驚きだ。

 そして現在では、主要なパソコンのほぼ100%のシェアを得ているという。更にパソコン以外のサーバや通信端末にも利用されていて、成長を続けている分野だ。

最後に:半導体不足って味の素が原因?

 結論から言うとこれは噂の範囲を出ない実際、一部の事業では「ABF」の品薄によって生産に影響が出ているとの情報もある。

 しかし、冒頭にも述べた通り、昨今の半導体不足は「生産工場の火災」「コロナウィルスによる生産ラインへの影響」「経済・政治的事情」「需要拡大」など、様々な事情が重なりあって生まれたものである。

 ある一社、ある製品に関して「どうも味の素のABFが足りないらしい」というだけで「世界的半導体不足の原因」というのはあまりにも大げさである。

 とはいえ、そうした主張が「もっともらしい」と捉えられるほど、味の素の半導体事業というのは今や世界に欠かせないものになっている。今回の半導体不足をきっかけにそんな学びを得ることができた。

参考
[1]ABFフィルム(味の素株式会社ホームページ)